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土木のデザイン その6

土木のデザインとは、どのように、何を、デザインするのだろうか?

「景観とデザイン」(オーム社)の中に書かれていることをまとめてみました。


 デザインの対象には、「もの」「空間」「関係」があります。デザインにおいては、直接的には構造物という「もの」の大きさや形などを決めことと同時に「もの」よって影響をうける周辺の「空間」をつくることでもあり、既存の「もの」との関係をつくることでもあります。
 このことから、土木のデザインは、ひとつの専門性ではカバーできません。エンジニア×デザイナー、専門家×市民などのコラボレーションにより、互いにフォローし合い、多様な観点からの創造性を生みながら、作っていくことが大切です。

次に公共物としてのデザインはどうするのか?を考えます。
 公共物のデザインには「利用の公共性」「プロセスの公開性」「しくみの公正性」が求められます。それぞれに必要なキーワードについての解説を下記に示します。
・パブリックデザイン
 パブリックデザインに求められる要件は、独占されるものでなく価値や利益が共有されること、そこへの参加や情報が開かれていること、そして資金を効果的に使いルールや基準に沿って公正に行われていること。

・利用の共有性
 パブリックデザインでは、利用者は特定のひとではなく、様々な人を想定しなければならない。想定される多様な利用をその空間がゆったりと受け止められるようにすることが課題となる。多岐に渡る要求を満たそうとするのではなく、シンプルな形でも多くのニーズを満たすことができる。また、土木のデザインは寿命が長いため環境が変化しても価値が持続できるように考えることが大切。

バリアフリーユニバーサルデザイン
 パブリックなデザインが備えるべき質は、特定の人だけのためではないこと、特定の人を排除しない共有される価値を広げることである。そういった質を満たすための参考として、バリアフリーの基準値を使っていく。

・プロセスの公開性
 パブリックデザインの「開かれていること」とは、利用者が開かれているだけではなく、デザインを決めていくプロセスが開かれていることも含まれる。
誰がいつどのようにして決めてたのか情報を公開し、また、それに対して要望や意見を言う機会を確保するPI(パブリック・インボルブメント)という手法と手順が整ってきた。

・社会実験
 人々の行動が重要となるデザインでは、最終的な形を決める前の実験的状態を一定期間取ることが有効である。こうした人々の参加を得た試みを社会実験という。プロセスを公開しながら管理してく方法によって最終的に無駄なくよりよい成果を得ることを考えたい。

・しくみの公正性
 公共事業では、常にコスト削減を求められるが、「安かろう悪かろう」では長期的にみれば無駄や負担が増える。大切なのは価値と予算の適切な関係でありVFMという考え方に基づいた判断である。
 デザインによって得られえる質を客観的に示すのは難しいが、デザインコンセプトにはじまり、そこに込められた意図や工夫を説明し、意思決定者の合意を得ることは公正な方法である。景観やデザインの質は、「三つのアプローチ(視覚、身体感覚、意味)」で論理的に説明することが可能である。

 上記は、「環境とデザイン」に記載されたことをまとめたものですが、公共物のデザインだけでなく、土木事業全てにあてはまる考え方であり、我々土木技術者は、業務にあたり常に持ちうるべき素養であると考えます。

 

今日のコラム

 地元にある歩道橋です。落ち着いたデザインの橋が夕焼け空と

マッチしていました。

 

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